膀胱炎
泌尿器科では男性だけの疾患(前立腺肥大症など)がいくつかありますが、一方で圧倒的に女性に多い泌尿器科疾患のひとつが膀胱炎です。(若い女性の3人から5人に1人はかかるといわれています)
繰り返しやすいことも特徴のひとつであり、一方で放置すると腎盂腎炎という、命にかかわる状態(敗血症)になりうる疾患にもつながります。
かかったら適切な投薬でしっかり治すこと(さらに言うと、治っていることをきちんと確認すること)、また繰り返しやすい人は、日常生活で気を付けることができる点がないか確認することも大切になってきます。
発熱がない、またはあっても微熱であることが特徴で、高熱がある場合には腎盂腎炎など他の疾患の合併を疑います。
当院での診断・治療の流れ
他に疾患のない健康な女性の場合(急性単純性膀胱炎)
問診(自覚症状、どのような経過か)と尿検査(尿の中に白血球と細菌が存在することを確認)で診断します。
当院では採尿後すぐに、医師が顕微鏡で尿を観察し、すみやかな診断・治療方針の決定が可能です。
腰痛などの症状がある場合、超音波検査を実施する場合もあります。(内診を行うことはありません)
原因菌を顕微鏡で観察した結果から推定し、原因菌に対応する抗生物質(内服/のみ薬)で治療します。
症状が改善した、と思っても細菌がくすぶっている場合があるので、薬をのみきった後に来院いただき、尿検査で細菌がいなくなったことを確認します。(くすぶった細菌を放置すると薬が効きにくい膀胱炎を繰り返す可能性があります)
※抗生物質内服のポイント
- 抗生物質は薬の中でも副作用が出やすい薬です
- 副作用かな、と感じることがあれば、直ちに変更します(下痢、頭痛などのあらかじめ予想される症状で、様子見できそうな場合はのみ続けても大丈夫ですが、無理して我慢する必要はありません)のでご連絡ください
- 妊娠中には使用できない薬があります。薬の決定に重要な情報となりますので、妊娠している可能性があるかお伺いさせていただきます
- 処方された日数分を全てのみ切ることが必要です
- 症状がよくなったからと途中でのむのをやめてしまうと、わずかに残った細菌が薬剤抵抗性を獲得(薬が効かなくなる)した上で再度増殖し、不快な自覚症状がぶり返して、治療が難しくなる可能性があります
- 抗生物質は薬の種類によって効く細菌が異なります
- 以前使った抗生物質が余っていたなど、他の症状で処方された抗生物質をのんでも膀胱炎の原因菌に効くとはかぎりません
- 膀胱炎の原因菌の中にも多数の種類が存在します。薬剤抵抗性を獲得した細菌(顕微鏡の観察だけでは診断が難しい)が原因菌である場合など、最初に選択した抗生物質が効かない場合もあります。膀胱炎を繰り返している方や1度目の治療でよくならなかった場合などには、尿を培養して原因菌を特定する検査や、どの薬剤が効きやすいかを調べる検査を追加します(結果が出るまで日数がかかります)
複雑性膀胱炎
名前のとおり、”複雑”な膀胱炎で、健康な女性がかかりやすい一般的な膀胱炎(女性は男性より体の外から膀胱までの距離が短いので、直腸に常在している細菌が侵入しやすい)とはちがって、何らか原因となる他の疾患が関与することでおこる膀胱炎です。男性の膀胱炎では単純性膀胱炎の可能性は低く、複雑性膀胱炎を念頭に対応します。(膀胱炎と似た症状を呈する前立腺炎の可能性も検討します)
膀胱炎の治療として、原因菌を推定/特定し、対応する抗生物質を投薬する、という流れは急性単純性膀胱炎と同様ですが、原因となっている疾患(他の泌尿器科疾患、免疫系に障害をきたす全身疾患など)を特定することが重要になります。
なお、複雑性膀胱炎の中には、普段は膀胱炎症状がない「無症候性細菌尿」と呼ばれる病態があり(症状がないのに尿に細菌が存在)、急性増悪で症状が出た時にのみ治療するとされています。但し、妊婦さんの無症候性細菌尿については、治療することで妊娠中の急性増悪をある程度予防できるため、積極的な治療が推奨されています。(かかりつけの産婦人科にご相談ください)